[書評] 北野唯我『転職の思考法』感想・レビュー~人生の自由度~

2019-01-21

[書評] 北野唯我『転職の思考法』感想・レビュー~人生の自由度~

あ・・・

これ・・・

俺のことだ・・・

北野唯我さんの著書『転職の思考法』を読んだときに第一にそんな印象を受けました。

私は新卒で就職した一部上場の企業で営業職を8年ほど続けた後、会社を退職して転職することを決意しました。

頭の中が覗かれているのかと錯覚するくらい、物語の主人公である青野の置かれている境遇が当時の自分と重なり、共感を覚えます。

この本にはそんな不思議な説得力がありました。

 

そして一方で、「自分の市場価値」という現実を突き刺してきます。

ただ共感して寄り添ってくれるのではなく、そんな残酷ともいえるリアルを訴えかけてくるところに、この本がベストセラーになった理由があるのかもしれません。

 

この本に書かれているのは転職に関するテクニカルな指南やアドバイスではありません。

その代わり、人生の自由度をあげるために必要なエッセンスが詰まっています。

就職を控えている学生、転職を考えている会社員、すでに退職はしたもののその先に進むべきキャリアが定まっていない人、その誰もが共通に持っている「人生の自由度」について、これほど丁寧に解説した本はないのかもしれません。

 

『転職の思考法』主人公の共感ポイントまとめ

『転職の思考法』主人公の共感ポイントまとめ

本書はビジネス書には珍しく小説のような物語形式で書かれているのですが、まず驚くべきはそのリアリティです。

うわ、こんなこと俺にもあった・・・

という共感のオンパレード。

ドラマ『半沢直樹』が多くのサラリーマン世代に共感を得て大ヒットしたのと同じように、『転職の思考法』には物語の世界に入り込めるぐらいのリアリティがありました。

著者の北野唯我さんは人材サービス会社の役員をやられている仕事柄たくさんのサラリーマン世代の人と接する機会があるので、そこでの情報収集が量・質ともにハンパじゃないのでしょう。

たとえば以下のような共感ポイントがあります。

ひとつでも心当たりのある人はこの本を読むべきです。

 

社内のくだらない人間関係の噂話に辟易する

いつからだったろうか。僕はこういう話を自然にミュートすることができるようになった。

誰々が誰々と不倫しているらしい・・・

とか、

誰々と誰々が仲が悪くて対立しているらしい・・・

とか、

誰々が昇進したからあっちの派閥のやつらは左遷だな・・・

とか、

会社にはなぜか、そんな誰も得しないようなくだらない人間関係をうわさする人が一定数以上いて、いやでも耳に入ってきます。

さらには派閥や社内政治といった形で権力を使って実体化する人まで現れます。

こういったことにいちいち感情を動かされたくないので、いつしかミュートするようになる。

転職活動をしはじめて会社や自分の仕事を客観視するようになると、これらのミュートしていたことがいかに不快でくだらないことかがわかり、余計にその会社に留まりたくないという気になるものです。

 

営業なのに心から売りたい製品が自社にない

自分が信じていないものを売る、これほど人の心を殺す行為はないんだ。

営業にとって最大の悲劇、それは、自社に心から売りたいと思える製品がないことでしょう。

他社のほうがスペックがいい・・・

海外で作ったほうが安い・・・

実は過去にトラブルを起こしている・・・

そんな心の声をにフタをして、

 

サラリーマン

サラリーマン

当社の製品を買ってください

 

とPRするのは精神的にかなりの苦痛を伴います。

これは一つの会社に所属することの宿命ともいえます。

そんな普段から感じている不満を代弁してくれたかのようなエピソードを本書から読み取ることができ、嬉しくすらありました。

社内会議では工場や開発部門の悪口を言いながら、社外ではその製品を顧客に販売する

そんな器用さを身に付ける労力をするくらいなら、転職する労力の方がよっぽど軽いんじゃないかと今では思います。

関連記事

>>>営業が辛いのは心から売りたい製品が自社にないからだ

 

 

転職する人間は裏切り者扱い

転職は裏切り者のすることだからな

これまで何人もの後輩が辞めていくのを目にしてきました。

そんな時、必ず聞くのは、

 

男A

おじさん

最近の若いやつは根性がないからすぐ辞めるんだよな~

 

という、テンプレートのようなセリフ。

こういうときに、「若手が定着しないくらい魅力がない職場である」、ということに危機感を持つ人が本当に驚くほど少ないです。

こういう人は所詮、会社を辞める人間は会社への忠誠心が低い=裏切り者、としか思っていないんです。

私は長期休職を申し出た直後に最低の人事評価を受け、この現実を目の当たりにしました。

 

関連記事

>>>[不当] 休職直後の人事評価で最低のボーナス査定をもらった

 

 

本書を読み進めていくと、「会社への忠誠心」なんていうのは「会社に居ることが目的化してしまった人」が使う典型的な言い分であることがわかります。

このような価値観をもった人が身近な上司にいる場合は、真剣に転職を考えるべきタイミングであると考えたほうがよいでしょう。

 

『転職の思考法』が突きつける市場価値という現実

『転職の思考法』が突きつける市場価値という現実

絶対にダメな選択肢は、生産性が低くて、かつ、成長が見込めない産業で働くことだ

ここまでサラリーマンの辛い現実に共感して、

じゃあ会社なんか辞めて夢を追いかけよう!

なんていったらそこいらの怪しいキラキラビジネスセミナーと化してしまいます。

 

転職で自由を得たいなら「市場価値」を軸に戦略的に立ち回らなければいけない

 

本書にはその戦略に必要な思考法が詳細に書かれています。

この思考法こそが本書の真の魅力であり、人生の自由度を上げるためのカギです。

私も含め多くの人は会社に入るときに、その業界が成長産業かどうかなんて考えなかったかと思います。

大きい会社だから安定しているだろう・・・

給料も福利厚生もしっかりしている・・・

なんとなく興味のない業界を切っていって消去法で・・・

大学生だった当時、就職活動をするにあたって業界を絞るときの思考なんてそんなもんでした。

唯一の救いだったのは、海外営業という市場価値の向上につながりやすい部署を志望したことです。

『転職の思考法』を読んだとき、

大学生のときに読みたかった!

と真剣に思いました。

 

転職の思考法を身につけて人生の自由度を拡大する

転職の思考法を身につけて人生の自由度を拡大する

他の誰かが作った船に後から乗り込んでおきながら、文句を言うのは筋違いなんだよ

以前は私も、思い通りの仕事をさせてくれない会社に文句を言ったり、不当な評価を受けて呆れたりしていました。

でもそれらは結局、「他人の作った船」に乗っている以上、どこまでもつきまとう宿命なんだと気が付きました。

「転職の思考法」を読んだ後、タイミングを計ったかのように、ゴールデン番組のスポンサーをしているような超有名企業が次々と数千人規模のリストラを発表しました。

企業だって厳しい現実に立たされています。

 

この厳しい現実の中でも人生に自由をもたらす方法とはなにか?

 

それは人によって起業かもしれないし、Youtuberになることかもしれません。

が、多くの人はそれでも企業に就職してサラリーマンになります。

昔からのサラリーマン的な人生と、個人として独立する人生、その中間に位置して両者をいいとこ取りしたのが転職の思考法を身につけた生き方です。

 

社内の人間関係

製品の競争力

忠誠心の強要

企業の恩恵を授かって安定を得つつこれらのストレスから開放されるもっとも低リスクで効率がよい方法が転職の思考法をみにつけて市場価値を上げることです。

私自身も実際に転職を経験してみて、転職がもたらす人生の自由度の大きさを実感しました。

「この会社に骨を埋める気だ」

という覚悟を持っていない全ての人が読んで損はない一冊です。