メーカー営業のやりがいは日本のものづくり技術に触れること
大学時代は漠然と「メーカーに就職したい」とジャンルを絞って就職活動をしました。
ではなぜメーカーを志望したかというと大して明確な理由もなく、ただ漠然と
- 日本には有名なメーカーがたくさんある!
- モノを売るってわかりやすい!
- 商社とか金融とか興味を持てなかったから消去法で!
といった理由で絞り込んだに過ぎなかったりします。
そんな感じで就職活動をし、そんななかで興味を持った企業への志望動機を深堀りして、面接の対策をして・・・
そうして新卒で、インフラを支える産業機器メーカーに入社して営業一筋でおよそ8年勤めて出した結論、
メーカー営業のやりがいとは何か?
についてまとめます。
新卒で入った会社は既に退職しましたが、振り返って思うのは、とても楽しかったし、人生を豊かにする成長の機会を得る場所として、とても有意義であったと感じています。
就職活動や転職活動の面接対策で志望動機の作りこみに悩んでいる人など、是非参考にしてみてください。
日本のものづくりを支えてきた技術の蓄積
話は少し反れて、学生のときイギリスの大英博物館を訪れたときのこと。
大英博物館には、エジプトのミイラ、古代ローマの彫刻、アジアの仏像、ラテンアメリカのマヤ文明やアステカ文明の石碑、などなど世界中から集められたお宝をみて
あぁ・・・この国はかつて世界の頂点に君臨していたんだなぁ・・・
という印象を肌で感じました。
日本のメーカーの世界に感じたのは、それと似たような感覚です。
アフリカの砂漠のど真ん中や中南米の山奥など、世界の各地に点在する製品・・・
自分が生まれる何十年も前に作られ、未だに現役として稼動している機器・・・
還暦を過ぎた技術者の持つ知識・経験の奥深さ・・・
今でこそものづくりの日本は古い、もう時代は変わった、なんていわれますが、それでも、
かつて世界のインフラを支えたものづくりの技術とその蓄積は伊達じゃない!
この技術に触れる喜びこそがメーカー営業として働くやりがいであり、醍醐味であることは間違いありません。
その技術に素直に感動し、「ものづくり」とか「職人」といったものに愛着を抱けるかどうかがメーカー営業のやりがいを見出すカギです。
メーカー営業が見た国境を越える技術のかっこよさ

お客さん
例えば海外のお客さんからこのような緊急の依頼が営業に入ってきたとしましょう。
こういったとき、私の頭に真っ先に浮かぶ、この緊急の案件に対応し得る数人のエンジニア、それらは全て50オーバーのベテランの技術屋さんでした。
優秀なベテランの技術屋さんたちは現場に入ると、長年の経験と独特の嗅覚で問題の原因となる箇所をすぐに見つけ出します。
どんな困難な状況も技術力を駆使して奇跡的に切り抜けていく瞬間を何度も目にしてきました。
それはもう純粋にかっこいい!
こんなこともありました。

オチョ

技術屋さん

オチョ
海外に派遣し、現場に到着してわずか30分で仕事を終えてしまったベテランエンジニアとの会話です。
まさに早業・・・
そしてベテランの技術屋さんの仕事はこれで終わりではありません。
帰国後に、期日内に、完璧な英文レポートをビシっと作成して出してきます。
その文章の構成、データの挿入、写真の挿入といったビジュアルはもちろん、さらには英文の文法もスペルも表現も、完璧なものを作ってくる。
レポートを見て「美しい」という感想を持ったのはこのときがはじめてです。
このようなことがたくさんあるので、お客さんからは「ミスター〇〇を派遣してくれ」と、指名されるケースも多々。
メーカー営業と技術の関係
このように度々、ベテラン技術屋さんたちの「誇り」と中途半端なものを世に出すまいという「責任感」には感心させられました。
メーカー営業としてそんな職人気質な人たちとする仕事は、学びがたくさんある一方で、時にはきびしいこともあります。

技術屋さん
なんて感じで怒鳴られることもあります。
つい先日まで大学生だったぴっかぴかの新入社員にはショッキングな世界かもしれません。
でももちろん、何でもかんでも頭ごなしに怒るわけではありません。
例えば営業の仕事である、お客との交渉に関して怒ったりすることはありません。
私の経験上、特に工場の人を怒らせる要因になるのは情報伝達の遅れや内容が不十分だったりときです。
それも当然。
工場の課長・マネージャークラスの方たちというのは部下の命を預かっている立場の人です。
なので現場の作業工程に影響を及ぼすような対応を営業がしてしまった時は、ものすごい迫力怒られます。
それは全て自分の部下を守るためであり、自分の仕事に少したりとも妥協したくない職人ならではのものです。
それを理解して、怒りの裏側にある部下への愛情を感じることができれば、営業としての視野も広がって成長するチャンスが増えます。
まあ、言葉遣いが多少荒いことは否めませんが、それは時代もあるのだろう、と割り切って、やっぱり憎めない工場の頑固親父たちです。
メーカー営業が見る日本のものづくりの衰退
技術こそメーカーの一番大切な資産であり、仕事の一番中心にあるべきものです。
それゆえに、ものづくり技術の衰退を目の当たりにしたときは残念な気持ちにもなります。
ベテランの技術屋さん、工場にいる職人さんは本当にかっこいい!
それは当時、高度経済成長とバブル景気の恩恵で大量の仕事が舞い込んできた時代に鍛え上げられたことが大きく影響しています。
仕事・プロジェクトが人を育てる
残念ながら当時ほどの仕事・プロジェクトに恵まれていない現在の日本では、成長する機会が限られており、技術屋さんの質そのものが世代によって大きく変わっています。
国内のインフラ事業という、海外勢力から高い参入障壁に守られた温室のような市場に甘えていたメーカーで育った技術屋さんは英語もしゃべれないし、チャレンジ精神も少しずつ失われていきます。
そして、かつてバリバリ世界を牽引していった時代の技術屋さんたちも高齢になり、その役目を負えて一人また一人と引退していきます。
人が少なくなって工場を訪れるたびに疲弊していく同期の技術屋さん。
それにも関わらず、新入社員は本社にばかり配属され、スタッフ系の職種ばかりが出世していく。
そんな潮の変わり目を目の当たりにしたのも、私が転職を決意したきっかけです。
メーカーがひとたび、
仕事がない ⇒ 技術が継承されない ⇒ 仕事がない
のサイクルに入ってしまうと、そこからはなかなか抜け出せないと思います。
このサイクルを生涯をかけて抜け出してやる、というまでの愛社精神は私にはありませんでした。
それよりも、良いサイクルに乗っているメーカーを探し、そこに転職する方が、自身としても成長できるし、会社の将来性もより期待できます。
メーカーは技術が中心、だからこそ営業である自身の境遇や営業スキルよりも、その会社の技術屋さんたちの境遇や技術力を、会社の将来性を測る判断材料にすることがよいかと思います。
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